般若経

大乗仏教の思想の集大成

紀元前後から1世紀中ごろに成立した「般若波羅蜜 ※1」が説かれた経典群を般若経とよぶ。
インド仏教の部派仏教の中でも大乗仏教が示した経典で、お経の中でも最も古い大乗仏教経典群とされる。

※1
大乗仏教で説く、菩薩が行う悟りの彼岸に至るための6つの修行項目。真理を認識するさとりの智慧。1.布施(ふせ)2.持戒(じかい)3.忍辱(にんにく)4.精進(しょうじん)5.禅定(ぜんじょう)6.智慧(ちえ)

般若経の内容・思想・教理

その経典の内容はいずれも大乗仏教の教軸となる「空」の思想について記されていて、その境地に至るための菩薩の修行実践(般若波羅蜜)の推進や、最高の智慧(般若)を完成・体得させるなどが示されている。


般若波羅蜜は、釈迦の説いた六波羅蜜の6つ目の「智慧」が他の5つを統括するという意味を持つものとして、大乗仏教の教理で重要な部分を示している。

般若経で示される最高の智慧とは仏陀の智慧のことであり、そして大乗仏教はその思想を更に独自に発展させ、菩薩は衆生の救済をする「利他行」を実践する者とされ、その存在は神聖化されている。

大乗仏教のこの教えは、原始・部派仏教の教えにある「己の精進のもと悟りに到達する」というものを大きく変革し、「己のみではなく衆生を導き救うことが必要だ」と説く利他行を重要視してその教理を発展させている。

般若経の種類

般若経典の種類はたくさんあり、各方面で個々に成立されたとされる。
主な般若経は、大品般若、小品般若、道行般若、文殊般若、金剛般若、理趣経などがあり、それらをまとめて集大成したもので、鳩摩羅什(くまらじゅう)が翻訳した「摩訶般若波羅蜜経」、三蔵玄奘(さんぞうげんじょう)が翻訳した「大般若波羅蜜多経」などがある。

日本で良く知られている般若心経は三蔵玄奘の翻訳のもので、その中でも文字数が少なくカジュアルに空の思想がまとめあげられている。

これらの諸経典は後に、中国で漢訳されたものが日本、アジア各国へ伝播され、仏教各宗派のよりどころとなって仏教全般に広く浸透していく。

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